文章を真剣に読ませること
国語の読解力をつける方法はいくつもありますが、基本中の基本といえることがあります。それは、「真剣に文章を読もうとすること」です。これは、生徒さん側の姿勢や性格も関係するのですが、ある程度技術的に文章を真剣に読ませることができます。
文章を真剣に読ませるには以下のような方法があります。
1.文章を音読させる
文章を読むさいに、生徒に音読させます。
読解の初期段階では、一字一句ないがしろにせず読むようにさせることが大切です。声に出して読ませることで次のような生徒の学力を知ることができます。
1) 読めない字、読み間違えている字がわかる。
2) 意味のかたまりをつかめているかわかる。
3) 書いてある表現を正確に読んでいるかわかる。
1) は、まさに漢字の読みができているかの確認です。間違えていたら、すぐに振り仮名を書かせます。
2) は、意味のつながりを正確につかんでいるかの確認です。極端な例を出すと、「にわにはにわにわとりがいる」という文を「庭には二羽鶏がいる」と理解し、意味の切れ間で区切りを入れて読めるかといった確認です。
3) は、文章の表現から逸脱し、勝手に表現を変えて読んでいないかどうかの確認です。助詞を読み飛ばしたり、否定表現を肯定表現に変えて読んだりといった間違いの確認です。文章をあわてて読む生徒によくみられる傾向です。
集中させる方法として、「マル読み」が有効です。「マル読み」とは、文の終わりの目印である句点「。」が来たら、つぎの生徒に交代するという音読法です。
ひとりの生徒に長く読ませると他の生徒が聞かなくなることがあるので、一文ずつ交代して読ませるのです。
とはいっても、あまり、頻繁に交代するのもかえって内容理解にマイナスの影響が出るので、文章の長さや生徒の集中力によって交代するタイミングは変えるのがよいでしょう。
2.文章内容を質問で確認する
文章を一通り読んだ後に、内容を一問一答形式で確認する方法です。
たとえば、つぎのような文章を読んだとします。
───── 以下引用文 ─────
吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。
夏目漱石『吾輩は猫である』
───── 引用文終わり ─────
読み終わったら、次のように生徒に一問一答で内容を質問していきます。
講師:では、文章の内容を確認します。質問に答えてください。
講師:吾輩はなんですか? はい、山田くん
山田:猫です
講師:何がないんですか? はい、田中さん
田中:名前です
講師:何が見当がつかないのですか? はい、鈴木くん
鈴木:どこで生まれたか
講師:どこでニャーニャー鳴いていましたか? はい、本田くん
本田:薄暗いじめじめしたところ
講師:吾輩は何を始めて見ましたか? はい、佐藤さん
佐藤:人間です
◆ポイント◆
・生徒一人ひとりに尋ねること
・即答できる簡単な質問にすること
・テンポよくすすめること
こうすると、生徒は一生懸命文章を読もうとします。
文章全体を尋ねるのは厳しいので、重要な段落の内容を確認するときなどに使うとよいでしょう。
3.三色ボールペンで読解指導
わたくしは、最近では、国語の苦手な生徒さん相手には、あまり文章全体の説明をしません。
読解の授業の典型的な形としては、問題演習を宿題に出したり、時間を計って授業中解かせたりし、その後答え合わせをするというものだと思います。
ですが、この方法はある程度学力のある生徒さん相手に有効な方法だと思っています。つまり、苦手な生徒さんにはあまり効果がないように思うのです。
そもそも読解が苦手な生徒さんは、どうやって解いたらいいかわからなかったり、面倒がっていい加減にやったりして、問題を解くことをしっかりできないことも多いのです。そんな解き方をしていたら、いざ答え合わせというとき、いくら解説をくわしくしてもあまり効果がないでしょう。
そこでわたくしが考えたのが、「三色ボールペンでつける読解指導」です。
この方法は、10人程度の比較的少人数の生徒相手におこなう授業では有効な指導法だと考えています。
【三色ボールペンで読解指導の方法】
1. 生徒みんなで読解問題の文章を音読します。
2. 時間を決めて問題を解かせます。
3. 生徒が解きだしたら机間巡視し、生徒が解答を書いたら、すぐに採点します。
4. 一回で正解したら赤色の〇、二回目は青色の〇、三回目は黒色の〇で採点してゆきます。
※ 採点のとき、不正解の生徒には、学力によってヒントをだします。正解したら理由も尋ねてみます。
※誤答は消さずに残しておかせます。
※ 正解したら大げさに褒めるようにします。
この方法で指導すると、どの生徒さんもかなり真剣に本文を読み考えるようになります。
全体で答え合わせをすると、一回間違えてしまうとそれで終わり。答えを聞いて「ふーん、そんなものか」と思って終わり。
ところが、上記の方法で解かせると、だいたいの生徒さんは正解になるまで一生懸命考えるようになるのです。
おそらくこれは、
・3回まで解答を出すチャンスがあること
・間違うことが逆に解答のためのヒントになること
・自分で正解にたどり着く喜びが得られること
といった点がモチベーションを上げやすくするのだと思われます。
この方法を採用してから、苦手な生徒さんも読解に集中するようになり、なにより本文をしっかり読むようになりました。苦手な生徒さん、集中力が続かない生徒さん相手には、なかなか有効な方法だと考えています。